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by lia-swiss
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Blinde Kuh

先日、Blinde Kuh、直訳すると盲目の牛、というレストランに行ってきました。

チューリッヒ在住の方なら、もうすでにご存知かと思われますが、このレストランは、真っ暗闇の中でお食事をするということ、そして、ウェイターは皆盲目の方々ということが特徴なのです。

古い教会を改築したレストランに入ると、そこはロビーになっていて、レセプションがあります。レストランへの入り口は、真っ黒いカーテンで仕切られていて、そこから先はこちらからは全く見えません。




私たちのテーブルを担当してくれるウェイトレス、Anjaがその真っ黒なカーテンをくぐって、私たちを迎えにレセプション前まで来てくれました。私たちはAjnaを先頭に、後ろの人が前の人の肩をつかみ、列を作って、ゆっくりとカーテンをくぐってレストランの中に入っていきます。

中は本当に真っ暗闇。ちょっとは見えたりするのではないかと思っていたのですが、何にも、本当に何も見えないんです。どうやって目をこらしても駄目。暗闇の中で動くのがこんなに怖いことだとは思ってもみませんでした。
ゆっくり、ゆっくり歩いているせいか、私が怖がっていたからなのか、テーブルにたどり着くまで結構長くかかったような気がしました。Anjaが一人ずつ順番に手を取って椅子まで誘導してくれます。

席に無事着くことができたものの、ここで私は予想外の大パニックに襲われ、軽い呼吸困難状態に(ちょっと大げさかも?)。酸素が脳に回らないからなのか、頭もクラクラしていました。
一度病院の検査でMRIに入った時も、あまりの狭さにパニックを起こしそうだったことを思い出しました。閉所、共に暗所恐怖症?“暗いよ~、狭いよ~、怖いよ~!”って何処かで聞いた台詞(笑)。

とにかく、もうその暗闇から逃れたくて、来た方向に目をやってみるのですが、もちろん何も見えるはずもなく、ロビーに戻りたいけれど、一人で戻ることすら出来ないじゃない!と思ったら、更に状態が悪化。目を閉じて、気を静めて、夫に手を握ってもらって、そうしたら、なんとか段々落ち着きを取り戻すことが出来ました。

大分落ち着きを取り戻した頃、タイミング良くAnjaが来て、先程注文した前菜と食前酒を持ってきてくれました。飲み物や皿を置いてくれる時、毎回必ず、
“Anjaです。先程注文されたワインをお持ちしました。貴方の右側から失礼します。右手にあります水の入ったグラスの左横に置きます。”
という具合に丁寧に説明してくれます。

丁寧に説明されるので、どこにあるべきなのかは予測できるのですが、変に動いて食器を割ったりするのを恐れて、私の指はテーブルの上を恐る恐る辿います。やっとワイングラスにたどり着いても、ワインを一口飲んでまた元の場所に戻すのが至難の業。他のグラスやお皿にぶつかって割ってでもしたら大変だと思うと、更に慎重に・・・。他のゲストもきっとそうなのでしょう。お皿を落として割ったような音はどこからも聞こえてきませんでした。

時間を経て段々慣れてくると、どこに何があるのか分かってくるので要領を得てきます。ただ、フォークとナイフを使って食べるのはやっぱり難しくて、なかなかフォークに刺さってくれない、乗ってくれない、やっと何か釣れた!と思ってもソースだけだったり、で最後は片手とフォークでどうにか完食することができました。きっと私のテーブルの上はすごいことに・・・。

この真っ暗闇の中、一歩踏み出すことすら私には想像もできないのに、Anjaは風を切って颯爽と(Anjaが歩くと風を感じるのです)キッチンとテーブルを忙しく行き来します。そして、とても忙しいはずなのに、いつでも丁寧に私たちのリクエストに答えてくれます。私たちは、何もできない赤ちゃんも同様。泣く変わりに、”Anja~”と彼女の名前を呼ぶことしかできません。

私たちがおいとまする時は、もちろんAnjaに一人ずつ椅子から立たせてもらって、また来た時と同様に列をなしてレセプションの方に向かってゆっくり歩いてきました。長時間暗闇の中で目を開けていたので、レストランを出る手前の通路で、柔らかい明かりにまず目を慣らしてから外に出るようにとアドバイスをもらって、そこでAnjaとはお別れです。

普段レストランにいっても、然程ウェイトレスに思い入れなどないのですが、今回Anjaには本当に何から何までお世話になったので、正直抱きついてお礼を言いたいくらいだったのですが、シャイな私は断念して、無難にお礼を言ってお別れをしました。

今まで体験したことのない世界。たった2時間やそこらでしたが、レストランから出てきた後は、クタクタでした。この体験を通して、盲目の人たちのハンディをほんの一部でも知ることができたことは良い経験になったと思います。同時に、暗闇の中で自由に動ける能力に、あっと驚かせられたことも事実で、こういった盲目の方たちの能力が発揮できる働く場が提供されるということは、本当に素晴らしいことだと思いました。

レストランを出る前に、ゲストブックに夫と私でAnjaにメッセージをが書き残しました。

Anja、unser Engel in der Dunkelheit!
Anja, 暗闇の中の私たちの天使!
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by lia-swiss | 2006-08-04 22:10 | おでかけ